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ぼくらの“スニーカーレコード”。

スニーカーミュージック。

散々履き潰した夢。










日曜、焼肉を食べにいったのだ。

…と、言っても、コレは前々から予定していた気合いの入ったディナーというワケではなく。
いわばアクシデント焼肉だ。棚ぼた焼肉だ。
焼肉なんてそうそう行けてたまるか。ほんっとたまたまだったんだ。
…まぁ、それは良いとして…。

隣町の更に端の、海沿いの、年季の入った焼肉店。
民間企業の定年なんてとうに越していそうな老夫婦が営む穴場。
私たち五人は小上がりになった座敷席に座った。
おそらく店主であるあのおじいさんがハンドメイドしたと思われる衝立を挟んで隣にも一家族のお客さんが居た。
その家族が座っていたのが店のちょうど角の席で、その角には低めの天井に届きそうな位置にテレビが置いてあった。
テレビでは『クイズ☆タレント名鑑』なるものが流れていて、以前この番組を偶然見た時にけっこう笑えたのを思い出したので、ごはんにありつけるのを待つついでに私は半ば真剣にその番組に見入っていた。

衝立を挟んでいるとはいえ、私と隣の家族の距離は近かった。
店内には他にも6人程の団体客が一組居たものの、そちらとは少し離れていたし、私はテレビを見ていたので(そのうちごはんも到着したけれど、ちゃんと(?)見続けていた)、隣の家族の様子がだんだんと詳しく解ってくる。
どうやら四人家族のようだ。
小さな男の子(小学校低学年くらい?)と、女の子(きっと妹、だけどあまり歳は離れていないようだ)が居て。
その男の子が、もう、3分に1回くらいの割合でお父さんに怒鳴られている。
「(おそらく上着を)着るのか脱ぐのかハッキリしろ」だとか、「喰いたくないなら喰うな」とか、衝立を飛び越えてうっかり私が萎縮してしまいそうなマシンガンペースなのである。
そのうちすっかりテレビよりもそのことが気になってきて、焼肉も私自身はクライマックスを迎えていたので(焼肉では、食欲的にはまだ食べられるとしても白いごはんが無くなったらおしまいだ!!というマイ・ルールがある。これを人呼んで、”おかわりorナッシング”という)、不完全燃焼な胃袋も視線も聞き耳も持て余していた。

そうすると、番組が非常にあほらしい(この場合は褒め言葉だ)企画を始めた。
過去に一世を風靡したタレント達が、今の時点で自分の限界に挑むというものだ。
そこでアニマル浜口さんが「気合いだー!」を限界まで叫び続けるという挑戦が始まった。
じゅーじゅーと焼け焦げる鉄板の音に紛れて、「気合いだー!気合いだー!気合いだー!…」の渾身の連続咆哮。目をつぶってこの2つの音だけ聴いていればまるで地獄絵図である。それに時々、”隣のお父さん”の怒鳴り声も加わる。
それでもやっぱりこの企画は面白い。
そう思いながらへらへら笑っていると、それまで私と同じタイミングでけたけたと陽気に笑っていた”隣のお母さん”がいきなり子ども達に語り始めた。

『あんたたち、愛のムチって解るね?!』

”隣のお母さん”は、親の子に対する愛故の厳しい躾についてを語っていたのだ。
『愛のムチ』発言の次には、お父さんもあなた達につらく当たることがあるけれど、それは決して意地悪をしてるわけではない、というような内容の話を続けていた。
その真剣さたるやなかなかの剣幕で、今まで隣の家族の会話などあまり気にもしていなかった(ように見えた)こちらのテーブルの面々も、少し離れたところに居た他のお客さんでさえも、にわかに静まった。

”隣のお母さん”の力説。
その間も、「気合いだー!」の咆哮は続き、バックでJourneyの”Open Arms”までかかる始末で、記録は918回。まさに驚異的な結果だった。

そしてお店全体が妙な感動の余韻に包まれる中、隣の家族は席を立ち、帰っていった。

私たちはその家族よりも20分程長くお店に居ただろうか。
とにかくその家族が店を出てから、私は驚くべきことを聞かされた。

なんと”隣のお母さん”は、『愛のムチ』からの一連の発言をしている間ずっと、(私とやすんし以外の)こちらのテーブルの誰の目にも明らかだった程、泣いていたのだという。声も、衝立越しに垣間見える顔も、涙に濡れていたらしい。



面喰らった。
何故だろう、全く気が付かなかった。あの一連の発言より随分前から私はなんだかんだであっちに聞き耳を立てていたはずなのに。



でも、もうひとつ面白いことが解った。

”こっちの”父は、なんと”隣のお父さん”がずっと男の子に対して怒鳴っていたことに気が付かなかったと言うのだ。
不思議な話である。

まぁ、無理もないかもしれない。
”隣のお母さん”は、ちょっと聞いただけでタールとアルコールを想起させるような貫禄の漂う声(しかもボリューム大きめ)だったけど、”隣のお父さん”はまるで少年のように軽くて高い、澄んだ声だったのだ(私にはそれが尚更、その人が男の子を怒鳴りつけているということを際立たせたのだけど)。



見ているのに、聞いているのに、なぜ気が付かないことがあるんだろう。

衝立の向こうは、私の居るところと、どう違うのだろう。



凄まじい邪推だが、あの男の子は、あるいは家の中ではもっと、痛い目に、遭ってはいないだろうか。なぜ、あの女の子は一度も怒鳴られなかったのだろう。



これほど、勘違いだと良いと思うこともない。

あれはでも、パラレルワールドなんだ。



あの男の子が今より少し大きくなって、早く逞しくなって、すきな音楽を聴けて、素敵なスニーカーを買えるとラッキーだと思う。



そうすると、少しでも遠くまで、歩いていけることを知るだろうから。



たとえ夕暮れには、家に帰らなきゃいけなくても。
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comment

いつも拝見させてもらってます。今回は珍しい内容ですね。このような内容も面白いです!
  • 2011/02/22(火) 18:09 |
  • 愛のムチムチ |
  • 愛のムチムチ
  • [編集]

いい話ズラ。
  • 2011/02/22(火) 20:57 |
  • ズリとズラ。 |
  • ズリとズラ。
  • [編集]

Re: 愛のビシバシ

そのようにお褒めに預かり光栄です。これからも精進しまっせーーーw
  • 2011/02/26(土) 02:09 |
  • ま★ |
  • ま★
  • [編集]

Re:ズリのほうが多少良い…か??

現実は良い話でないのよ多分。人生いろいろ。…おりおりおりおー♪
  • 2011/02/26(土) 02:11 |
  • ま★ |
  • ま★
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ま★

Author:ま★
こんにちは。
ようこそおいでくださいました。

頭の中はとても愉快なやつです。
見た目はとっても冴えないですが。

更新は気まぐれになりそうですが、できるだけ頑張ります。

パーティーの招待状には、終わりの時間を書かないそうです。

しかしこのパーティーの本当に怖いのは、そもそも終わりの時間は永久に訪れそうにないこと。

ごゆっくり。

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